えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「離してくださいっ、重いですから!」
「ルチアは羽のように軽いよ」
「鋼で出来た羽根をご存じで!? それに目撃者がいないのにいちゃいちゃするなんて、そんなことっ」
「……目撃者、か」

 私の必死の抵抗を軽くいなしていた殿下が、私の言葉に考え込む。
 そしてそのままスクッと私ごと立ち上がり、そっと立たせてくれた。

「凄く効率のいいことを思いついたんだ」

 にっこりと笑う殿下に何故だか嫌な予感がし、じわりと額に汗が滲む。
 だが私は知っていた。この笑顔に勝てないことを。


 殿下にエスコートされるがまま会場に戻った私は、そのまま見せつけるように殿下の体に引っ付きつつついていく。
 令嬢たちの視線が痛いが、これは正しく見せつけられているということなので極力気にしないようにして歩き続けた。

“どこに向かっているのかしら”

 殿下は私の腰に腕を回し、然り気無く進む方向を誘導しながら会場の真ん中を通り、そしてそのまま真っ直ぐ突っ切って廊下へ出たかと思ったら、そのまま奥の部屋へと入る。
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