えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 そこはいくつか用意してある休憩室の一室で、流石にベッドなどはないものの気分が悪くなった時などに横へとなれるようかなり大きめのソファが用意されていた。

「……あの、私別にコルセットとか苦しくないといいますかっ」
「そう? 気付いてないだけで苦しいかもよ」
「えっ!? そういわれれば……? じ、じゃなくてっ、密室! ここ、密室です!」

 牽制のために、とテラスから出たのに結局また二人きりになってしまったことに戸惑っていると、いつになく真剣な表情をした殿下が私の顔をじっと見る。

「ここは所謂休憩室だ」
「は、はい」
「そこにあれだけいちゃいちゃしていた二人が入っていったらどう思う?」
「それは……」

 “そういう行為”をしていると思われるかもしれない、と口に出そうとして私は息を呑んだ。

「つまり、それが狙いなんですね!?」

 私の言葉に大きく頷いてくれた殿下を見て確信する。

“だからあんなに密着して、わざわざ会場を通り抜けたんだわ!”

 あれだけアピールして練り歩いたのだ。一人くらいは私たちの後をつけていただろう。
< 29 / 262 >

この作品をシェア

pagetop