えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 ――私みたいに、という思いには気付かないフリをした私が殿下の言葉に頷くと、彼の手のひらがそっと頬に添えられる。

 思ったよりも手のひらが熱くて思わず肩がピクリと跳ねるとまるでその反応に呼応したように殿下も動きを止めるが、今度こそ失敗しないようにと思いながらそっと瞳を閉じた。

 私が目を閉じたことで同意を確認したのか、更に彼の顔が近付く気配を感じ心臓が痛いくらいに暴れる。

 そしてすぐ私の唇に、再び彼の柔らかい唇が押し付けられた。

「っ」

 触れては離れ、そしてまたすぐ重ねられる唇。

“最高の角度を確かめているのかしら?”

 それとも押し付ける強さを確認しているのだろうか。
 何度もふにふにとした感触が与えられると、なんだか体が熱く、そして息苦しくなってしまう。

“というか、本当に苦しい……!”

「んっ、ぷは……、んぁっ」

 まさかこんなに何度も連続で重ねられると思わなかった私が酸素を求めて思わず口を開くと、その動きに反応してすかさず殿下の舌が口内へと侵入した。

「鼻で息をするんだよ」
「!」

 流石、方法は知っていると断言するだけはある。
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