えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 殿下のアドバイス通り必死に鼻で呼吸すると、一応酸素不足は解消したのだが、口付けは止まらない。

 私の歯列をなぞるように殿下の舌が動き、口内を蹂躙された。

「あ、待っ、こんな口付け、知らな……っ」
「だったら僕が教えてあげる。ね、舌を出して?」
「舌?」

 私の言葉に口付けを止めてくれた殿下。
 その彼の言う通りに舌をチロリと出すと、同じく舌を出した殿下と目が合った。
 そして舌の先端が殿下の舌と触れる。

“こんな、これも口付け、なの……!?”

 唇を重ねることが口付けだと思っていたのに、まさかこのような派生があったとは。
 その事実に驚きながらも、舌だけを器用に絡ませあっていると、突然私の舌が殿下の唇に食まれた。

「ぁっ」

 彼の口内に包まれ舌が扱かれるように動かされる。
 まるで殿下の口の中に自ら舌を突っ込んだかのような罪悪感と、触れ合わない唇がもどかしくてもっと深く触れたいという欲求。

 その相反する気持ちに惑わされるように気付けば私は殿下の服を強く握り締めていた。

「……そんなにされると皺になっちゃうな」
「ご、ごめんなさいっ!」
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