えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 今ここにお母様がいらっしゃらないのも、諜報を兼ねたお茶会の準備に忙しいからで、そして王太子殿下がいらっしゃるのに準備を優先させる不敬が許されているのは盾として長らく父がこの国の騎士団長を勤めていたからである。

 全属性の加護持ちという貴重な存在であった殿下は自由に遊びに出ることが出来ず、唯一彼が安心して遊べる相手が騎士団長の子供たち、つまり私たち兄妹だけだったのだ。

 だからこそ、力を付け自由を得た今でも気兼ねなく訪問ししれっと朝食に参加されているのかもしれないが――


 にこやかに微笑む殿下へとチラリと視線を向け、ズキリと胸が痛む。
 きっと今日彼がコンタリーニ家の朝食に参加したのは、私が先日受けた騎士団試験の結果を聞きに来たからだろう。

“兄のエミディオはトップ通過して今では第一騎士団に所属しているというのに”

 私は。
 
「……あの時のお約束を守れそうにありません」
「ルチア?」

 思わずぎゅうっと自身のドレスの裾を掴んでしまう。
 だが王太子の彼には遅かれ早かれ知られてしまうから。

 意を決した私がガバリと頭を下げると、三人ともがきょとんとした。
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