えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「可愛いルチア、本当は全部欲しいけど……」

 はぁ、とため息のような熱い吐息が彼から漏れて頬を掠める。
 流石にダメか、と呟いたジルが重ねるだけの可愛い口付けを降らせるが、敏感になった体はそれだけで甘く痺れた。

“全部……”

 彼の言う全部は、肉壁との練習では出来ないのだろう。
 きっとこの先を知れるのは、いつか現れる彼の『本命』だけなのだ。


「ルチア、好きだよ」

 軽く頬に口付けられ、上体をぐいっと起こされる。
 脱がした時に着せる順番を覚えたのか、迷いない手つきで私のコルセットの紐を締めドレスを着せてくれた。

 いや、何でも出来る神の愛し子である彼ならばいつか来るその時の為にレディのドレスの着脱の仕方を閨教育のひとつとして教わっているのかもしれない。

“こうやって私相手に練習するくらいだもの”

 神の愛し子と誰もが認める彼は常に完璧を求められているのだから。
 

「そういうこと、誰にでも言っちゃダメですからね」
「あぁ、ルチアにしか言わない」

 あっさりと断言されたその言葉に思わず口角が緩む。
< 43 / 262 >

この作品をシェア

pagetop