えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「そ、それがどういう意味かわかってるのか!? というか、やっと殿下の気持ちに気付いたのか……!?」
「殿下の気持ち?」

 言われた言葉の意味がわからず思わず首を傾げると、そんな私の表情に何かを察したのかがくりと項垂れる。

「……いや、いい。多分外堀を埋めてるだけだと理解した」
「外堀?」
「はぁ、そろそろ俺の胃を労って欲しいよ……」
「な、なんなのよ」

 わざとらしいくらいの大きなため息を吐いた兄に釣られて私も小さくため息を吐く。
 いつも穏やかに笑っているジルとは大違いだ。

「ほんと、ジルはいつも笑顔なのよね」
「じ、ジル!? それ、殿下の愛称か!?」

 小さく呟いた言葉を耳ざとく聞き取った兄が驚愕の表情で狼狽えながらそう詰め寄ってきて、私の方こそ狼狽えつつコクコクと頷く。

「ジルがそう呼んでって言ってたから」
「いや、それいつも言ってたしお前はいつも断っていただろ!?」
「それはそうなんだけど……」

“でも、あの時のジルの声がまるで乞い願うようだったから”

 その時の彼の熱さに、気付けばそう呼んでしまっていたのだ。

「……? おい、ルチアお前顔赤くないか?」
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