えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 ここで負けるわけにはいかないと、ごくりと唾を呑みコルティ公爵家のメイドの案内で会場である庭園へと向かう。

 案内された先は可愛らしい花に囲まれた会場で、そこにはあの夜会の時にジルへ群がり、そしてフラージラ様の登場後はひたすら彼女の取り巻きになっていた令嬢たちが勢揃いしていた。

“敵地!”

 誰もいない場所などに案内され遅刻のレッテルを貼られるような嫌がらせをされなかったことに安堵しつつ、だが味方がいないだろうことも予測できる。

 可能なら警戒しぐるぐると回りを徘徊しながら違和感がないかを確認したいところだが、当然そんなことをしては不審者という烙印が押されてしまうので、私は精一杯余裕そうな顔を作り令嬢らしく優雅にカーテシーをした。

「本日はお招きいただきありがとうございます」
「来てくださって嬉しいわ、ルチア様」
「はい、フラージラ様」

 互いににこにこと笑いながら席に着くと、どうやら私が最後の参加者だったらしくすぐにメイドが紅茶を配ってくれたのだが――

“こう来るのね”

 コトリ、と目の前に置かれた紅茶は沸騰しそうなほど熱々のものだった。
< 48 / 262 >

この作品をシェア

pagetop