えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 何にもなれなかった落ちこぼ令嬢である私にジルが与えてくれた役目。
 仮初めだとしても、好きな人の婚約者になれたということだって私の力になるから。

 
 私は真っ赤な唇で笑っているフラージラ様を真っ直ぐに見つめ、そして口を開いた。

「私は冷ましてから飲みます」
「あら、この熱さがいいのよ。遠慮なさらないで? って、嫌だわ私ったら! ルチア様には加護がないから口内が爛れてしまうものね?」
「そうよ、ルチア様は何にもお持ちではないんだったわ」
「その点フラージラ様の加護は流石ですわ! こんなに熱々の紅茶も飲めてしまうんですもの」
「まさしく王太子妃に相応しい加護!」

 わざとらしくフラージラ様がそう口にすると、待っていましたと言わんばかりに周りの令嬢たちも次々と口を開く。

“これが言いたかったのね”
 
 予想通りの流れに少々呆れつつ、私はわざとらしくため息を吐いた。

「でも、紅茶って少し蒸らした方が美味しいのではないかしら」

 すべての紅茶でそうなのかは知らないが、少なくとも私の知っている紅茶は蒸らして香りを豊かにするのが基本の淹れ方だ。
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