えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 まだこの紅茶を飲んでいないので香りがどうなのかはわからないが、そもそも火の加護とは火傷しづらくなるだけであって熱さを感じないという訳ではない。

 なら、わざわざ普段からこんな熱湯のような紅茶を飲んでいる訳ではないだろう。

“これは私への嫌がらせだと思うのよ”

 囃し立てている取り巻きの令嬢たちも熱湯紅茶を誰も飲めていないので嫌がらせが成功しているのかは微妙なラインだが、普段から熱湯状態で紅茶を飲んでいないならきっとこの紅茶は普通に蒸らして香りを出すタイプである可能性が高い。

 そしてその推測は当たっていたのだろう、一瞬フラージラ様の表情が歪んだ。

「蒸らさずとも美味しい紅茶だってありますわ」
「この紅茶がそうなんですか?」
「この紅茶は……」

 私の質問にフラージラ様がチラリと視線を動かして助けを求めたのは、平凡な茶色の髪にオレンジの瞳を持ったどこかか弱そうな令嬢。

「お姉様、だから私はやめた方がいいとあれほど……」
「でも、こうするのが効率よく加護をアピール出来るじゃない」

“お姉様ってことは、彼女が妹のメルージラ公爵令嬢ね”
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