えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 姉とは違い、その色味から彼女の加護があまり強くないことを察する。
 きっとそのせいで悲しい思いや歯痒い思いもしてきたのだろう。少しおどおどとした自信なさげなその様子から思わず同情の気持ちが芽生えた。
 まぁ、全く無い私と比べれば十分だが。

「確かにこの紅茶はどうやら蒸らす方が美味しいかもしれませんがっ」
“いや、絶対そうでしょ”

 フンッといまだに何故か自信満々のフラージラ様に私は内心突っ込みつつ次の言葉を待っていると、突然立ち上がった彼女がビシッという音が聞こえそうなほどの勢いで私に指を指した。

「でもこの世にはきっと熱湯の方が美味しい紅茶だってあるはずよ!」
「……はぁ」
「信じてないわね!? いいわ、私とその紅茶を探しに行くわよ!」
「……は、はぁぁ!?」

 その突然の宣言に、私はもちろん取り巻き令嬢たちすらも呆然として固まる。

「私の加護の素晴らしさを、私がいかに王太子妃に相応しいのかを証明してみせるわ!」

 一人納得したように頷いているのは当然フラージラ様だけだ。
 
 
“なんでこんなことに!!”
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