えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 敵地への武器として、今回のお茶会には先日の夜会でジルが大量に贈ってくれたアクセサリーの中でシンプルだったもののひとつをつけて行ったのだ。

「婚約者というアピールにもなりますし」
「うん、ありがとう」

“まぁ、私が着けたかっただけなんだけど”

 ジルに背を向ける形でよかったと内心安堵する。
 きっと建前を口にする私の顔は赤く染まっているはずだから。

 
「ルチア、お茶会はどうだった?」
「あー、お茶会は……何故か今度フラージラ様とふたりでお買い物へ行くことになりました」
「えっ!? 僕ともふたりではないのに!? じゃ、なくて。えーっと、どうしてそうなったのかな」

 いつも冷静なジルの慌てる様子は少し面白い。
 きっとこれも、私を心配してくれているからこその反応なのだろう。

「フラージラ様は加護が強くて……」
「うん」
「その加護の中でも美味しく飲める紅茶を探しに行くことになりました!」
「何故」
「加護が強いからです!」

“あら? でもその紅茶を見つけても、当て付けのように出されるのは私なのよね?”
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