えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「いや、侵入じゃなく挿にゅ……いや、いい。口付けで済んでるならそれでいい」
「?」

 しどろもどろになりながら顔を逸らす兄に首を傾げつつ、よくわからないがとりあえずジルの護衛をしたいのだということだと理解する。

“まぁ、コンタリーニ家は王家の盾だものね”

 騎士団員として立派に働く兄が側にいるならばジルの身は安全だろう。

「じゃあその、お仕事無理しないでね。おやすみなさい、ジル」
「仕事が終わったらもう一度来てもい……」
「殿下、執務に戻るお時間です」

 ジルの言葉を遮るように兄がそう口にし、ジルの背中を押すようにして共に玄関へと向かった二人をぽかんとして眺める。

 完全に不敬だと思うのだが、一応幼馴染みという関係のお陰かジルは相変わらずにこにことしながら手を振ってくれていたので、私も手を振り返し彼を見送ったのだった。
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