えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「まぁ! ないの!? どうして!」
「ど、どうしてってそれは……」

 わざわざ熱湯状態で飲むメリットがあまりにも少なすぎるからだと思うのだが、それを言うのは野暮というものだろうか。

 だがここで黙っていると、取り寄せ依頼をしかねない。
 そして取り寄せるとしても、そんな茶葉があるのかすらわからない以上店主を困らせることになるだろう。

“フラージラ様は公爵令嬢ですもの、きっと店主では断れない”

 でもだからといってないものを作ることは出来ない。
 だからこそ、王家の盾も担っている侯爵家である私から言わねば、そう。それを店主も願っているはずよ……!

 だって私は、私たちは!
 余裕と優雅さ、そして美しさも兼ね備えたこのカヴァリア国の高位貴族なのだから!!
 

「フラージラ様、あまり店し……」
「まぁ、ないなら仕方ないわね。次に行くわよ、ルチア様!」
「えぇえっ!!」
「何よ、品のない声を出して」
「ひ、品がないっ!?」

 気合いを入れたのに思い切り肩透かしを食らってしまった私が思わず声をあげると、バサリと扇子を広げて口元を隠したフラージラ様が呆れた声を出す。
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