えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“呆れたいのは私なんですけど!”

「ふふっ、私の方が優雅ね。つまり私の方がジラルド様にお似合いじゃなくって?」
「なっ、誰のせいで……! ジルが選んだのは私です!」
「じ、ジル!? あっ、愛称で呼ぶだなんてズルいじゃないっ」
「ズルくなんかありませんー!」

 余裕と優雅さ……なんて概念をコロッと忘れて思わずフラージラ様と言い合っていると、クスッと小さな笑い声が聞こえた気がして慌てて振り返る。

 そこには店主をはじめ数人の店員がにこやかな接客スマイルで立っているだけなのだが――……

“今絶対笑ったわよね?”

 馬鹿にしたような笑いではなく、どちらかといえば微笑ましいと思って見ているような、そんな雰囲気が漂っていた。

「え? いやいやいや、あの私たち別に友達とかじゃ……」
「またお二人でのご来店お待ちしております」
「二人!? 私とジルじゃないわよね? まさか私とフラージラ様なのっ!?」
「さぁ、時間は有限ですわっ! 私の方がいかにジラルド様に相応しいか見せつけて差し上げます!」
「ちょ、フラージラ様ッ!」
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