えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 そしてとうとう高位貴族の美しさとやらすらも忘れて、私を置き去りにして店を出たフラージラ様をバタバタと慌ただしく追いかけたのだった。


“くっ、汗かいちゃったわ”

 完全にフラージラ様に振り回されている私と完全に私を振り回しているフラージラ様が次に入ったのは宝飾品店だった。

「いつもご利用誠にありがとうございます、フラージラお嬢様。本日はどういったものをお探しでしょうか?」
「そうねぇ……」

“またこのパターン!”

 ついさっき似た会話を聞いたことを思い出し脱力しかける私だったが、さっきとは違いここには彼女の持つ火の加護を引き立てるようなものはないはずだと気を取り直す。

 そんな私の方をパッと振り返ったフラージラ様は、その美しい赤い唇をニッと上げて鼻を鳴らした。

「もし何でしたら今日の記念に私が買って差し上げてもいいですわよ?」
「え」
「だって私、公爵令嬢ですもの……! お金なら沢山あるの、お小遣いが溢れて困っているんだから!」
「お、お小遣い!?」

 序列こそ公爵家である彼女の家柄の方が上ではあるが、私だって侯爵家の娘。
 十分高位貴族である。
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