えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“それにしても、デビュタントも終えた令嬢二人でお小遣いなんて単語を連呼することになるなんて”

 まさかそんな単語が飛び出すなんて思わなかったせいで完全に遅れを取ったが、だがこれは戦いなのだとわかっていたではないか。

 そして戦いとは、同じ高さに立ってこそ成立するのだ。

「それは奇遇ですわね。私だって侯爵家の娘なの、自分で買えます! お、お小遣いだって持ってきたもの!」

 気恥ずかしさを必死に誤魔化しそう宣言する。
 宝飾品店の店主もなんだか微笑ましそうにこちらを見ている気がするが、どうか気のせいであってくれ。

「遠慮なんていりませんわ。ほら、このネックレスとか……あら? ルチア様のネックレス……」
「え? あぁ、このネックレスはジルに貰ったものです」
「……!」

 私の首に輝いているのはオパールのネックレス。
 先日のお茶会に着けていたものとはまた別の、小ぶりだが鎖が繊細で、またオパールの周りも可愛い小鳥モチーフに加工されていて可愛らしいものだった。

“普段使いには少し高価な気がするけど、今日はフラージラ様との第二ラウンドだし”

 それに折角ジルがくれたものなのだ。 好きな人から貰ったものを身につけていたいと着けてきたのである。
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