えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「フラージラお嬢様には、こちらのピアスを」

 そして同じように彼女の前には私の髪色に似たピンクダイヤのピアスが置かれる。

「アクセサリーはネックレスだけではありませんよ。本日の記念をお求めでしたね、こうやって互いの色を交換すればこれも特別な意味のある一品になるでしょう」
「そうね……、店主の言う通りだわ」
「はい。私もそう思いま――いやいやいや! 私たちが互いの色を贈り合ってどうするんです!?」

 一瞬その場のいい雰囲気に流されかけた私だったが、すぐにハッとしてフラージラ様の方を見た。

“ダメ! 完全に雰囲気に流されてるわ!”

 彼女が羨ましがっていたのは『ジルからの贈り物』だという部分であって、決して『もうネックレスを持っているから贈れない』ということではない。

 だがこれが売り手の策略なのか、すっかり言いくるめられてしまったフラージラ様は少し頬を赤らめながらそのピアスを眺めていた。

「…………。」
“――ちょっと可愛い。じゃなくて、これは戦略よ! 肉壁としての仕事のひとつなんだから!”

 内心そんな言い訳をしながら、小さくため息を吐いた私は再び店主へ視線を戻す。
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