えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「……そのピンクダイヤのピアス、コンタリーニ侯爵家へ請求してください」
「え?」
「プレゼントします、フラージラ様」

 私の言葉を聞いたフラージラ様が一瞬きょとんとし、そしてすぐに眉をひそめて私を睨む。
 
「わ、私は誰かに買って貰わなきゃピアスひとつ買えないような貧乏人じゃな……!」
「こっちのルビーのピアスはフラージラ様が買ってください。記念、なんですよね?」
「あ……え、えぇ。そうね、これは記念だわ! 店主っ、そのピアスの代金はコルティ公爵家へ請求しなさい!」

 照れ隠しなのか、わざとらしいくらい思い切りふんぞり返ってそう告げるフラージラ様に、その場の雰囲気がより一層生暖かくなる。

 思わずむず痒くなるが、何故だか悪い気分ではなかった。
 

「お二人の友情が末永く続きますように」
「「なッ」」

 包んで貰ったピアスを渡される時にそう店主が付け加え、私とフラージラ様が思わずギョッとする。

 だがさっきのやり取りがあったせいか、私もフラージラ様も否定する言葉が咄嗟に出ず、はくはくと口を動かしただけでその店を後にした。


「……ど、どうしてこうなってしまったの?」
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