えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「私だって知りたいですよ」

 はぁ、とふたり同時にため息を吐き、そんな瞬間がなんだか可笑しくてまた同時に吹き出した。

「少し小腹がすきましたわね」
「確かにそうですね」

 緊張して朝はあまり食べられなかったこともあり、フラージラ様の言う通りお腹がすいたような気がする。

“さっきので一気に緊張が解けたからかもだけど”

 なんとなくお互い顔を見合せクスリと笑った私たちは、フラージラ様が教わってきたという侍女お勧めのお店へと向かうことにしたのだった。


 フラージラ様のお勧めの店までは少し距離があるらしく、再びコルティ公爵家の馬車へ乗り込む。

“あんなに居心地悪かったのに”

 行きはただ苦痛だった内装ギラギラのコルティ公爵家の馬車だが、彼女に親近感が湧いてしまったからだろうか。
 ふたりだけのこの空間が、少し楽しく感じるようだった。

「……私、まだ諦めませんわ。ずっとジラルド様のことをお慕いしていたんだもの」
「はい」

 肉壁としてはここでジルの望んでいないライバルは弾くべきだろう。
 そうわかっているのに、何故か私の口からはそんな言葉しか出ない。
< 73 / 262 >

この作品をシェア

pagetop