えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 彼女の切実な想いが伝わるからか、胸が締め付けられた私はその痛みを誤魔化すように馬車の外へと目を向けた。


「……ん?」

 ふとその景色に違和感を覚える。

“こんなところ行きに通ったかしら”

 いや、でも今は帰っているのではなく小腹を満たしに食事が出来るお店へと向かっているのだ。
 景色が違うなんてことは当たり前かもしれない。

「そうよね? なんかどんどん王都から離れてる気がするけど」

 きっと知る人ぞ知る名店なのだろう。
 公爵令嬢のお勧めなのだからそうに違いない。
 ちょっと一瞬チラッと王家の影であるお母様に聞いておけば、なんて思ったが今更過ぎた。

「…………?」

 ガタゴトとやたらと小刻みに揺れる馬車内。
 
 流石公爵家の馬車ということもあり、設置されているソファとクッションがふかふかでお尻が痛くなったりはしないものの、それでもこんなに揺れるなんて違和感があると思うのは私だけなのだろうか?

 何だか段々と嫌な予感が増し、不安になった私は思わずフラージラ様の様子を横目で窺う。
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