えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「それからそのっ、貴女のことはこれからルチアと呼ぶわ。だから貴女も、私のことはララと呼んでもよくってよ!」

“なんか、懐かれてない?”

 さっきまでの緊張が嘘のように脱力しソファに思い切りもたれる。
 そんな行儀悪い私を怒ったように見る彼女の表情は、きっと『お友達』という距離感に攻め込んでいいかの緊張からくるものだろう。

「……いいんですか? 私、邪魔者だと思うんですけど」

 肉壁かどうかは置いておいて、現状彼女の想い人の婚約者は私なのでついそんなことを口走ってしまった。
 だが彼女はそんな私を、今度は叱るような視線で見る。

「それがどうしましたの。私、諦めないと言いましたわ。でもそれは貴女を落として獲るものではありません、自分を磨いて得るものよ」
「!」

 あっさりとそう断言されたその言葉に、唖然とした私はすぐに自分の口角が緩むのを感じた。

“フラージラ様は最初からそうだったわね”

 自分の方が優れているから私の方がお似合いだという主張をし、決して相手が落ちこぼれだから相応しくないと蹴落とさない人。
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