えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 相手をステージから引きずり下ろすのではなく、自らが高みに上ろうとする人。

 そんな彼女だから、私は最初から嫌いにはなれず今日ここにも来たのだから。

「私だって負けないわ、“ララ”」
「! 今だけほざいてなさい、“ルチア”」

 ぷっとどちらともなく吹き出した私たちは、今だけは自分たちが高位貴族の令嬢だということを忘れて笑い合ったのだった。


「それにしても、公爵家お勧めのお店って遠いのね。秘境にでもあるの?」
「ふふふ、そうね――、えぇ」

 再び外へ視線を移した私と一緒にララも馬車の窓から外を眺める。
 そして。

「……ここ、どこかしら?」

 この場で一番聞きたくない言葉を言い放ったのだった。
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