えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 身代金……の可能性は低いだろう。
 
 馬車にはコルティ公爵家の家紋が入っているし、コルティ公爵家といえば誰もが知っている名前だ。そんな有名な家の令嬢を拉致し捕まれば死罪は免れない。
 それならば私たちの持っているものを奪うだけで十分お金になるのだから、変なリスクは冒さず身ぐるみをはがせばいいだけだからだ。

「私たちのうちどちらが目的なのかにもよりますね」
「我が家の馬車だから私かしら」
「王太子の婚約者ですよ、私かも」
「私たちふたりともって可能性もあるわね」
「ありますね」

 高位貴族となれば政治的に狙われることも多い。
 その為各家に私設の騎士団を持っていることも多く、今日だってコルティ公爵家の騎士が少し離れて護衛についてくれていた。

“今この場にいないってことは、もう……”

 その恐ろしい可能性に思わずぶるりと体を震えさせると、そのことに気付いたララがパっと顔をあげた。

「私がジラルド様と初めて出会ったのは、私のデビュタントの時でしたの」

 突然の話題の転換についていけず、思わずぽかんと彼女の顔を見る。
 相変わらずララの顔色は悪く、強がっていることが丸わかりだ。
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