えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~

2.盾と、影と、肉壁と

「それ、本気で言っているの?」
「ッ」

 温かく優しい殿下の声が、いつもより低く聞こえてギクリとする。

“怒らせてしまった? でも、ちゃんと言わなきゃ”

 ずっと一緒にいたからこそ、サヨナラ宣言のようなことをされれば怒りくらい覚えるのだろう。それも私のような落ちこぼ令嬢に。
 
 だが、これは殿下の為でもあるのだと私はごくりと唾を呑みもう一度口を開く。

「盾として戦うことの出来ない私はお側にいれません」
「この国は平和だし、万一の時の護衛もいる。ルチアの兄だって騎士として守ってくれているしそもそも僕の剣術はお義父上から学んでいるんだ、これ以上の守りは必要ないと思うけど」
「殿下、光栄ではありますが私をしれっと義父と呼ばれるのは……」

 まるで諭すようにそう言われ、私の心が少し揺れる。
 確かに王家の盾、つまりは筆頭騎士としての道をお兄様は既に歩み始めていると言っても過言ではないし、騎士団長の座を早くも下りたお父様だがそれは軍師として国の防衛の為に前線を退いただけであって力が衰えた訳ではない。

 だからこそ殿下の希望もあっていまだに父が稽古をつけているのだから。
 
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