えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 それはそれだけ彼らの行動すべてに責任が発生するからであるのだが、その状況で頭を下げるジルを私は彼らしいと感じた。

「もちろんわかっているとは思いますが、ジラルド様は何も悪くなかったわよ? 私が動けなくなったからダンスのリズムを崩し私が叱られているから庇いに来てくださった。彼は王族でこの国唯一の王子よ。……でも、もしジラルド様が例え貴族でなかったとしても、私はきっと彼が王子様に見えたわ」

“ララは、ジル本人を見てるのね”

 王太子だからだとか、自分が公爵令嬢だからとかではなく、ただ彼を好きなのだ。
 そしてその気持ちは、私も一緒だから。

「私だってジルが好きだわ。ほら、私って何も出来ないじゃない? 加護もないし騎士団試験も一次で落ちるし。でも、腐ったことはないの」

 どうせ私には何も出来ないから、と自分の人生を悲観したことはない。
 自分の不甲斐なさに、ジルの側にいられないと思ったことはあったけれど、だからと自棄になることはなかった。

「だって、いつもジルはただの“ルチア”を見てくれてるから」

 何も出来ないけど、何も出来ない私をひとりの個として向き合ってくれるのだ。
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