えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“お兄様は、ジルは……気付いてくれるかしら”

 きっと私たちがいないことには気付き、すぐに探してはくれるだろう。
 だが場所がわからなければ救助はこない。

 私たちに出来るのは、この場所を知らせる手立てを考えるかどこかに逃げ込み保護して貰う事。

「とりあえず、何か馬車の窓から落として私たちがどこへ向かっているかを知らせるのはどうでしょう?」
「る、ルチア天才なんじゃない……!?」
「え、えへ? 私ってばやっぱり才能ありますかね」

 まっすぐに褒められたことで少し照れつつ、頬を掻く。
 何も出来ない私の隠れた才能に感謝しつつ、窓から投げれるものを探し馬車内を見渡した。

“ここは公爵家の馬車”

 装飾に沢山の宝石類が散りばめられているので少し眩しく、クッションがふかふかのソファ付き。
 今日行ったのは紅茶のお店と装飾品店で、巧みなセールストークで買った記憶はないのに何故か手に持っている公爵家御用達の紅茶とララとお揃いのピアスが一組である。

 この中で選ぶのならば、ひとつ。
 豊富にあり窓から投げても音が出ない、どう考えてもこれしかない。
 
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