えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“コルティ公爵令嬢……、妹の方か!”

 社交でもあまり目立たず、公爵令嬢だというのに誰かの後ろに立っているせいであまり情報はない。
 まぁそれは、姉が目立っているせいでもあるのだが。

 チラリと視線をエミディオへ向けると、彼が予想していたのも姉の方だったようで一瞬戸惑いの表情が浮かぶ。

“姉がいない間に自分を売り込もうとしているのか?”

 いや、だがそんなタイプには見えないのだが……、しかし決めつけるのは良くないと思い直した僕はエミディオと連れだって彼女の元へと歩く。

「顔をあげ楽にしてくれ。何か話したいことがあるのだろう?」

 そう言いながら向かいのソファへと腰掛けると、エミディオはソファの後ろへと立つ。
 妹の心配で来たのではなく、あくまでも僕の護衛として来たという体面を保ちたいのだろう。

 そんな些細な変化は気にならなかったのか、おずおずとした様子でメルージラ嬢が口を開いた。

「ご、ご存知かもしれませんが、今姉がルチア様と出かけており、その、ちゃんと護衛もいて」
「?」
「でも私心配で、ですから、その」

 支離滅裂な言い回しにため息を吐きたくなる。
< 88 / 262 >

この作品をシェア

pagetop