えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 何が言いたいのかわからず、だがルチアの名前が出ている以上切り上げる訳にもいかない。

 苛立ちを奥に隠し、表面だけは笑顔を作って彼女を見ながら続きを促した。

「心配、とは?」
「……ッ! その、王太子殿下は、加護のない彼女を選ぶおつもりなのですか?」
「話はそんな下らないことなのかな」
「ひっ」

 重ねられた言葉に圧をかけてそう答えると、ビクリと肩を震わせる。
 これ以上は聞く価値がないと判断し、嫌な予感は杞憂だったかと立ち上がろうとした、その時だった。

「……コルティ公爵家の護衛が、撒かれました!」
「なに?」

 叫ぶようにそう言われ、思わずエミディオと顔を見合わせる。
 浮かせた腰をもう一度ソファへ沈め、続きを促すように彼女の方へと視線を戻すと、またどこか不安そうに視線を左右へとさ迷わせながらメルージラ嬢が口を開いた。

「私、ルチア様が心配で……、その、姉が王太子殿下を慕っているのは一目瞭然で、だから……」
「……」
「ッ、だからその、こっそり後をつけていたんです、未来の王太子妃に何かあってはいけないって」
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