えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
“で、でもダメなものはダメなのよ……!”

「それに影としても必要とされてはいないのです」
「影としての主な任務は情報収集と噂の操作だな。だがそれは長年社交界に君臨してきたお義母上だからこそであり、訓練を積めばなれるというものでもないだろう。確かに一昔前は暗殺任務なんてものもあったとは聞くが、今はそういった時代ではないはずだ」
「母上のことまでしれっと義母と……」

 穏やかな声色でそう重ねられる言葉に私も思わず頷きそうになる。
 確かに殺伐とした、他国からの暗殺依頼や謀反なんてことが平気であったような時代ならともかく、今は平和協定が敷かれ近隣諸国とも友好な関係を築いているし、何より次期国王である殿下はその能力に人柄もプラスして人気が絶大。

 そんな今の影の仕事といえば、何か不審なことが起こっていないかの確認や噂を使った情報操作。そしてそれらは婚約者もいない私のような令嬢ではなく『夫人』として社交界の中枢を担うようになって初めて効果が出るものだった。


“だからって私に殿下の隣にいる資格がある訳じゃないわ”
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