えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 さっさと重要なことを言って欲しいのに、そのまどろっこしい言い方に舌打ちしそうになる。
 だがここで焦れてそんなことをすれば、より萎縮させてしまうだろう。

“わざわざルチアを選ぶか確認したくせにルチアを王太子妃と呼ぶ意味はどこにある?”

 それとも彼女の言う王太子妃はフラージラ嬢のことなのか。
 それならばルチアがフラージラ嬢に何かをしたと言いたいのか?
 いや、話の流れからしてそれはない。

 一分一秒がやたらと長く感じながら、続きを待っていると、まるでやっと決心しましたというような表情でこちらへとメルージラ嬢が視線を向けた。

「コルティ公爵家の護衛が何者かに足止めされたんです。まるで護衛一人一人の癖を知っているかのような動きで……そして彼らが足止めされている間に馬車がどこかに出て……!」
「!」
「申し訳ありません、もしかしたら姉がっ」

 ソファから立ち上がり、床へと跪きながら彼女が頭を下げる。
 だがそんなこと気にしてられず、慌てて立ち上がった。

“ルチア!”

「どこに向かったかはわかるか!?」
「い、いえ、王都から出たとしか……」
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