えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
「嫌だなぁ義兄殿。ちょっとどこにいるのかを確認しているだけじゃないか」

 不安を誤魔化すようにあはは、と笑うと大きなため息を吐かれる。
 だが以前僕たちの空気は張り詰めたままだった。

「……っと、何かありますね」
「あぁ。なんだあれは……、っ、鳥の羽!?」
「それもこんな大量に!?」

 エミディオの視線の先を見ると、こんな場所にはそぐわない大量の鳥の羽が落ちていた。
 風で多少は移動し散らばっているのだろうが、それらを差し引いても一ヶ所にあるべきではないほどの大量な羽に違和感を覚える。

“何故こんなところに?”

 辺りに血痕がないということは近辺で殺された訳ではないのだろう。
 だが、何故大量の羽が落ちているのか理解が出来ない。

「風で飛ばされてきたとしても、不自然です」
「何らかの警告か、それとも……」
「儀式、という可能性も」

“儀式!”

 どんな儀式なのかはさっぱり想像つかないが、だが嫌な予感がする。

“加護を持つのは人間だけとされている”

 つまり、この殺された鳥たちに加護はない。
 だがもし、誰かの加護を移すことが出来たなら?
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