えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 ――嗜好品足り得るのだ。


「ララ、私の後ろに隠れてください!」
「な、何を言っているの! 貴女こそ私の後ろに隠れなさい!」

 互いに前を譲らず、私が一歩前に出るとすかさずララも更に一歩前に出る。
 もちろんそんなララを庇うように私ももう一歩進み、またララもそんな私を背に庇おう前に出た結果、私たちは扉に貼り付くような形になってしまった。

 貴族令嬢というか、年頃の令嬢としてあり得ないのだが顔をべったり扉に貼り付けていてちょっと、いやかなり見苦しい。

“でもここで引くわけにはいかないわ!”

「私は公爵令嬢です! 下々の者を率い、そして守る責務があるんですわ!」
「私の家は王家の影ですよ!? 他者を守る義務がありますぅっ!」
「……影?」
「あっ、間違えた! 盾、盾です! 盾ですけどぉ!?」
「って、ルチアさんは騎士団試験落ちているでしょう!」
「痛いところ突かないでください!」

 きゃんきゃんと言い合いながら、ギチギチと扉に貼り付き攻防をしていた時だった。

「おい、出ろお前ら――、ぅわっ!?」
「きゃあ!」

 ガチャ、と突然扉が開き、私とララが馬車から転がり落ちる。
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