えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 扉を開いた男を下敷きにしたお陰で頭から落ちることはなかったものの、それでも全身を至るところにぶつけて身体中が痛んだ。

“怯んでる場合じゃない!”

「ララ!」

 同じく転がり落ちるように外へ飛び出したララの手を掴み、その場から走って逃げる。

「あ、おい待て!」
「待てって言われて待つ馬鹿なんかいないわよっ」

 走りながら辺りを見回したが、どうやらここは小さな納屋のようなものがあるだけで他に建物などはない。

“どうしよう、逃げる場所がないわ”

「納屋に籠城するってのはどうかしら!?」
「そうですね、それが最善策かもしれませ……ダメっ、納屋から仲間が出てきたわ!」

 がむしゃらに納屋の周りを一周走る。
 ドレスが邪魔で上手く走れないが、納屋の角を曲がれば一時的に彼らの視覚から消え撹乱できるだろう。

“もう一か八かね”

「る、ルチアっ」
「大丈夫です、私についてきてください!」

 納屋の周りをぐるりと一周回った私たちの目の前に見えるのは、納屋から飛び出し私たちを追いかける男の背中とコルティ公爵家の馬車。

「籠城です!」
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