えぇっ、殿下、本気だったんですか!?~落ちこぼ令嬢は王太子の溺愛を肉壁だと思い込んでいる~
 そう叫び、私はララの手を引いて再び馬車の中へと飛び込んだ。

「こ、こんな、流石に見つかってしまうんじゃないかしら」
「いいえ、馬車から逃げ出した私たちが再び馬車に戻っているだなんて思わないはずです」
「そ、それもそう、ね?」

 私の言葉に戸惑いつつもララが頷いてくれる。

“今はここに隠れて助けを待たなきゃ”

 きっとジルがクッションの羽を見つけて私たちのピンチに駆けつけてくれる。
 だから、それまでなんとしても時間を稼がなくてはならない。

 扉を閉めて息を殺す。
 大丈夫だと言い聞かせながらララと体を寄せ合っていると、男たちの声が僅かに漏れ聞こえた。

「……おい、どうする……」
「交代の馬車がまだ……」
「とりあえず……閉じ込め……」
「このまま……様子見を……」
「都合……いい」

“ここは経由地点ってとこなのね”

 全てが聞こえる訳ではないので確信はもてないが、どうやらこの場所で馬車を変えて更に移動するつもりのようだった。

 外の声に耳を傾けていると、突然ガチャンと扉が外から閉められた音が響きびくりと体が跳ねる。
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