不良の理央くんはあたしの全部が好きすぎる
第四話「嫉妬と後悔」


◆第四話「嫉妬と後悔」


瑞稀「ちょっと理央! これ、どういうことよ!?」
瑞稀は理央に写メを見せる。
理央は写メを見てあっけらかんとしていた。
理央「どうもこうも、一緒に帰っただけだろ」
瑞稀「手繋いでるのはなんで!? 付き合ってんの?」
理央「は? なんでそうなるんだよ」
瑞稀「だって! 理央、女の子と手繋がないじゃん!」

ただ二人のやり取りを見ているしかない南。
南(今の様子だと、多分この女の人は私がミナミって知らないよね……)

理央「おまえには関係ねぇだろ」
瑞稀「関係ないってひどくない? 理由をちゃんと説明してよ!」

修羅場になっていくこの空気をなんとかしたい南。
南「あの……私が歩くの遅くて。それで手を握ってもらってただけなので……」
南の言葉を聞いた瑞稀の表情は和らいだ。
瑞稀「それなら仕方ないか。本当に付き合ってるとかじゃないの?」
南「うん、私と理央くんは友達だから」
一生懸命宥めていると、だんだん落ち着いてきた瑞稀。
南は瑞稀が理央のことを好きだと確信していた。同時に瑞稀の邪魔だけはしないようにしようと決心する。

瑞稀「花里さんごめん、いきなり待ち伏せしてこんなところ連れ出して。私、硯瑞稀(すずりみずき)って言うの。瑞稀でいいから」
南「私は花里南って言います」

状況は状況だがこんなふうに女子と話をするのは久しぶりな南。
理央とは違う意味で心臓がドキドキと鳴り響いていた。

瑞稀「じゃ、私もう行くから。理央、今日はいつものメンバーでカラオケ行くよ!」
理央「ああ? いや、俺は今日からーー」
瑞稀「約束ね!」
瑞稀はいい逃げるかのように去ってしまった。
その場に残された南と理央。沈黙が続く。
恐る恐る理央の表情を見る南。ムッと表情を歪ませていた。

南(何か言いたいけど、今私が何か言っても困らせるだけだよね……)
南「……理央くん、私もね昨日理央くんと一緒にいるところをマネージャーに見らてて、十分注意するように言われたばかりなの」
理央からの返事は返ってこない。
南「だから、もう送ってもらわなくても大丈夫だから」
数秒沈黙が続いた後、理央は一言言葉を発した。
理央「……分かった。迷惑かけて悪かったな」

そのままぐるっと背を向ける理央は無言のまま去って行った。
南(ーー瑞稀ちゃんのことも考えたらお昼も一緒に食べない方がいいよね……)
自分で自分に言い聞かせる南。なのに、苦しくて苦しくてたまらなかった。


○放課後(校舎の外)

理央達のグループが斜め前を歩いていることを発見する南。
理央達のグループは理央を含め、男子4人、女子3人の7人グループだった。理央や瑞稀のように全体的に容姿が派手。
やっぱり理央とは一緒にいられないと自分の中で気持ちを落とし込む南。


【一週間後】

○学校帰り・いつも着替えているトイレ(夕方)

いつものようにトイレで私服に着替えてマネージャーを待つミナミ。
深く帽子を被った中年の男性が近寄ってきた。
中年の男性「あの……」
持っていたカバンをゴソゴソと探りながら話しかける男性。
恐怖で体が硬直したままのミナミ。声も出せない。
目を瞑って恐怖から顔を逸らした。
???「おい、アンタ何してんだ」
パッと顔を上げると、目の前に立っていたのは理央だった。
理央は男性の方に手を置いている。
男性「いや、私は怪しい者ではなく……」
理央はチラッとミナミを見た。
理央「……知ってるか?」
ブンブンと首を横に振るミナミ。
理央は頷き、ミナミから男に視線を移した。
理央「これ以上ここにいるなら警察に通報するけど」
男性「あ、いや……」
男性は気まずそうに小走りでその場を後にした。
大きく息を吐いてその場に座り込んだ理央。
ミナミも一緒に座り込む。

理央「なんもされてない?」
ミナミ「……うん、大丈夫。ありがとう。でも、なんで……」
理央「この一週間こっそり花里の後つけてたんだよ」
ミナミ(ーーでも、いつも一緒にいる友達たちと帰ってたんじゃ?)
ミナミ「理央くん、友達は? 一緒に帰ってたんじゃないの?」
理央「花里が心配でいつも抜けてたんだよ。ごめん勝手な真似して。でも無事でよかった」
理央から手をぎゅっと握られるミナミ。
理央「やっぱ一人で帰るの禁止な」


○翌日自宅・ミナミの部屋(朝)


マネージャーから電話が掛かってきた着信で起きる南。
南「はい、もしもし」
マネージャー『ミナミ、今家? 至急ミナミの家に向かっていいかな」
南「うん、大丈夫」

マネージャーとの電話を終え、着替える南。
数分後、マネージャーが家にやってきた。
マネージャー「ミナミ、今から外に出れる?」
焦っている口調のマネージャー。
こんなこと今までなかったので焦る南。マネージャーの車に乗ると後部座席には何故か理央もいた。
南「理央くん、なんで……」
南と目を合わせるなり、気まずそうな表情をする理央。
何かあったんだとすぐに察した南。
マネージャーも運転席に乗り、出発しながら話し出した。

マネージャー「理央くんにはもう話したんだけど、やられたわよ」
南「やられた…?」
マネージャー「アンタ達、記者に盗られたわよ。来月の文集に載る」
南(載るって……そんな)
マネージャー「幸い、ミナミが花里南ってところまでは知られていないみたいだけど、時間の問題よ」
隣の席に座っている理央に視線を移す南。理央は強張った表情をしている。

南「どうしたら……」
マネージャー「とりあえず、友達って言い訳を用意しておいて、もう一緒にいない方がいいわね」
南(そんな……もう理央くんと一緒にいることできなくなるの?)


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