妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
 驚きながら振り向くと、リュオンは私の前で足を止めた。

「おれが独自開発した魔法だ。魔法書にも載ってない」
「良かった。もしロドリーでは一般的な魔法だったのだとしたら、ブードゥー様の館にいた魔女は魔力惜しさにサボっていたのかと恨むところだったわ……って、そんなことよりリュオン、ユリウス様はどうしたの? まだ五分も経ってないでしょう? 何か問題でもあったの? もしかして元に戻せなかった?」
 心配になって詰め寄ると、リュオンは急に私の手を掴んで見つめた。

「? 何? 私の手がどうかした?」

「……ふ。ふふ、あははははっ。全く、セラの力はとんでもないな! 薄々気づいてはいたが、魔法を使って確信した! レアノールの人間が誰一人、それも十七年も気づかなかったなんて信じられない! こんな魔法を使う魔女なんて国中探してもきっといない! なあセラ、きっと今頃、イノーラは《国守りの魔女》の称号を失って見る影もなく落ちぶれてるよ。確認するまでもない。並の魔女か、下手したらそれ以下になってる」
 リュオンは私の手を離し、愉快そうに笑っている。
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