妹に全てを奪われた伯爵令嬢は遠い国で愛を知る
 もしも居場所が割り出せたなら、今度は逃げられないよう首に縄をかけ、生涯、私の侍女としてこき使ってやるのに。

 そうよ、あいつに相応しい役割は私の侍女。
 あいつが《国守りの魔女》だなんてありえないわ。




 国花である薔薇が国中で咲き誇る一か月後、レアノールでは《花祭り》が行われた。

 レアノールは森の奥の小さな国で、その王城は川辺に位置している。

 王都の城前広場や川辺は人々で埋め尽くされ、祭りに伴う式典は順調に進行した。

 式典の最後を飾るのは《国守りの魔女》による《祝福の風》。

 これは魔法で風を生み出し、予め用意されている薔薇の花びらを空高く舞い上がらせ、この一年の無病息災の願いを込めて国民に花びらの雨を降らせるというもの。

 花びらの雨を降らせる範囲が広ければ広いほど賞賛の声も大きくなる。

《国守りの魔女》の腕の見せ所だ。

 とはいえ、いまの私では以前のように王都中に花びらの雨を降らせることは不可能。

 でも、矜持《プライド》の高い私は「できない」なんて口が裂けても言えないし、誰かに《国守りの魔女》の称号を譲るつもりもなかった。
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