素顔

プロローグ(男)

大柄の30代の男性は、携帯を支える便利なグッズを机に置き、そこに携帯を立て掛ける。
実は、この便利グッズはこの日の為だけに買っていた。
便利で安く有名な某百円のお店だ。
この日限りでも惜しくはないお手頃な値段である。
これから、ビデオ通話の機能を使ってオンラインでオフ会をする。
長話の彼女の事を思うと、ずっと手に持つのは疲れるからと購入の決めてとなった。

ネ友とはいえ、10年の仲だ。
顔が見えない分、本音で語り合ってるから下手な友人よりも己を知られている。
男性は、恥ずかしくも情けない事に、7歳年下の女性に愚痴を吐き出していのだ。
それ故に、今回のオフ会を怖いと思っている。
心地が良い関係なだけに、壊れてしまうのではないか...?

男性は本来、SNSで多少のやり取りをするけどガッツリと絡まないタイプだった...。
何事にも例外はある。

普段、個人的に連絡し合えるアプリの連絡先を教えるなんて言語道断であった。
10年前に今日のオフ会相手の彼女が呟く言葉に癒されてた。
アニメ、キャラに対しての愛が深く、鋭い観察眼と感受性があった。
ある時、予期せぬキャラの死。
推しキャラであったから、泣いてしまった。
フラグが無かったから...尊い推しキャラを生み出した作者に恨みもした。
彼女はその悲しみをSNSで呟いていた。同じ思いであった男性は、気まぐれにコメントをした。それがキッカケであった。

仲良くなり、連絡を取り合う様になって、男性は彼女の面白さに気づいてしまった。
彼女は突拍子も無く、思いついたままに行動をするのだ。

ある時、安いという理由で計画なしに大量の卵を買ってきた。
一人暮らしと聞いていたから賞味期限を心配したが、案の定、卵を大量消費する為に大量の高カロリーお菓子を生産してた。
そして、ダイエット中と聞いて心配したが予想通りに失敗してた。
俺は突っ込まずにいられなかった。
何故、ダイエット中に高カロリーのお菓子を作ったのか?
普通に卵料理を作ればいいのに...。
彼女の思考が理解できない。
まぁ、彼女から送られる写真で、カスタードクリームがたっぷりのシュークリーム等のお菓子を分けて欲しいって思ってしまった...。

ある時、彼女は言った。
私は男になりたい。
推しと結婚したいと真面目に話してた彼女の推しは男。
腐女子属性持ちの彼女の発想は...頭が大変愉快であった。
推しの嫁になるんではなく、推しを嫁にしたいという思考に至っていたのだ。
その願いも謎な方向に終息に終わった。
新登場したキャラが推しのダーリンに相応しいと言い出し、彼女は鑑賞出来る壁になりたいと言い出す。
来世の目標だと言っていた。


ある時、忍者になりたいと言ってパルクールを習いに行く事にしたと報告された。
過去に聞く彼女の運動能力では無理だと悟った。
予想通りに1日で辞めた事後報告があった。

男性は、彼女の人と少し外れてる思考と言動が面白いと酒のつまみにしながら聞いていた。
今回のオンラインオフ会は彼女の発案だ。
どこかで予感はしてたが、男性は自分も彼女に巻き込まれる時が来た。

最初は面倒臭いと思い、断っていた。だが、彼女は中々にしぶとい生き物であった。
結局、男性が折れる形となった。

まずは、ビデオ通話という名のオンラインオフ会から始めようとなった。
オフラインなのにオフ会かと矛盾した言葉に、彼女は相変わらずに面白い発想を持ってるなと感心していた。


あぁ、もうそろそろ時間だ。
いつもなら通話だけしか使わなかった機能、今日はずっと無視をしていたビデオ通話の機能のボタンを押す。

そこには_______。





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