シークレットガーデンと意地悪なアイツ【新作】
「お転婆娘もやっと落ち着いてくれて、嫁の貰い手まで見つかって安心してたのに、よりによって拳骨で殴るとは何事ですか」

「そんなこと言われたって…」

「殴ったりしなければ、向こうの落ち度だけで済んだのに、これじゃお互い様になっちゃうでしょ?本当に要領が悪いんだから」

母は昔から、浮気しない男などいないと諦めている人だったが、私はこれまで浮気された経験がなかった。

だからこそ、初めて浮気されて、まさかここまで頭に血が上るとは思わなかったのだ。

「結婚式の招待状を出す前だったのは、不幸中の幸いだったわね。結婚式場のキャンセル、ちゃんとしておきなさいよ」

これもまた、気が重い話だ。

まだ、友達にも婚約したことは話していなかったので、浮気され、殴って、破談というみっともないことを誰にも知られずに済んだのは、確かに良かったのかもしれない。
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