過去夢の少女
入学式
大葉高校の体育館は生徒と保護者でひしめき合い、大型扇風機が回っていてもムッとする熱さが充満していた。
さっきからステージ上で校長やら教頭やら、来賓者たちの挨拶が続く中、私は隣の椅子に座っている広中恵に視線を向けた。
「こんな風にまた同じ学校になれるなんて思ってなかったよね」
身を寄せて小さな声で言うと、大きな目をしばたたかせて恵は頷いた。
「だよね。中学は私が引っ越しちゃって別々だったけど、高校で再開できるなんて運命だよね」
恵は短い髪の毛を耳にかけて言った。
私と恵は小学校の6年間を一緒に過ごし、そして中学3年間は別々に過ごした。
小学校時代にはまだ互いにスマホを持っていなかったから、中学時代に連絡し合うこともなかったのだけれど、決して恵の存在を忘れたわけじゃなかった。
他の友だちと行った修学旅行では恵が一緒ならどんな感想を言っただろうかと気になったし、おいしい給食を食べた時も恵はどんな風に喜んだだろうかと考えた。
それくらい、恵と私の6年間は濃密だったと言える。
けれど恵が引っ越すことによって手紙のひとつもよこさない結果になったのは、恵の方から『落ち着いたら手紙を書くよ』と、言ってくれていたからだ。
だから私は恵からの手紙をおとなしく待ち続けた。
その結果、中学3年間で1度も恵からの手紙がこなかったわけだけれど、それについて文句を言うつもりはなかった。
さっきからステージ上で校長やら教頭やら、来賓者たちの挨拶が続く中、私は隣の椅子に座っている広中恵に視線を向けた。
「こんな風にまた同じ学校になれるなんて思ってなかったよね」
身を寄せて小さな声で言うと、大きな目をしばたたかせて恵は頷いた。
「だよね。中学は私が引っ越しちゃって別々だったけど、高校で再開できるなんて運命だよね」
恵は短い髪の毛を耳にかけて言った。
私と恵は小学校の6年間を一緒に過ごし、そして中学3年間は別々に過ごした。
小学校時代にはまだ互いにスマホを持っていなかったから、中学時代に連絡し合うこともなかったのだけれど、決して恵の存在を忘れたわけじゃなかった。
他の友だちと行った修学旅行では恵が一緒ならどんな感想を言っただろうかと気になったし、おいしい給食を食べた時も恵はどんな風に喜んだだろうかと考えた。
それくらい、恵と私の6年間は濃密だったと言える。
けれど恵が引っ越すことによって手紙のひとつもよこさない結果になったのは、恵の方から『落ち着いたら手紙を書くよ』と、言ってくれていたからだ。
だから私は恵からの手紙をおとなしく待ち続けた。
その結果、中学3年間で1度も恵からの手紙がこなかったわけだけれど、それについて文句を言うつもりはなかった。