過去夢の少女
堂々と
「どうして謝ったりなんかしたの!?」

職員室から出て部室棟への渡り廊下まで移動してきたとき、私は我慢の限界が来て恵へ向けて怒鳴っていた。

恵はさっきからずっと無言で歩いていて、今も冷静そうな顔つきをしている。
その澄まし顔が余計に腹立たしい。

「私達が閉じ込めたことは本人に目撃されてる。だから無駄に抵抗するよりも認めた方が早いと思ったの」

「だからって……!」
河村結夏に直接頭を下げたわけではないけれど、屈辱的な気持ちが湧き上がってくる。

ガンガンと、地団駄を踏むように足を踏み鳴らしてみても一向に気は晴れなかった。
「落ち着いて絵梨」
恵が優しい声で私の手を握りしめた。

落ち着いてなんかいられなかったけれど、恵にはなにか考えがあるように思えて深呼吸をして気持ちを整えた。

「ここから先はもう隠れてこそこそなんてしない。堂々とやればいい」
「え……?」

「今日の放課後、河村結夏を校舎裏に呼び出そう」
その提案に私は目を丸くし、そして微笑んだ。
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