過去夢の少女
河村結夏の運動靴は今もまだ掃除道具入れに入ったままになっていると思うと、おかしくてたまらない。
「あたしに……なんの用事?」

校舎裏には誰の姿もなくて寒々しく、せっかく植えられている花も枯れかけていた。
「なにって、ちょっと話があってさ」
河村結夏がチラチラと私へ視線を向ける。

その目は怯えた野生動物そのもので、もっともっと痛めつけたい気持ちが湧き上がってくる。
「で、でもあたしは本当にパパ活とかしてなくてっ」
「あぁ。そんなの知ってるよ」

私の言葉に河村結夏が目を見開いた。

「あんたにパパ活を強要されたって子ね、あれは隣のクラスの演劇部の子。あの時は私服の衣装を来てもらったし、メークも変えてたからまだ誰も気がついてないんだよ?」

クスクスと笑いながら言う恵に河村結夏が口をパクパクさせている。
その顔がすごく滑稽で、思わず声を上げて笑ってしまった。
「今の顔傑作」

そう言ってすぐにスマホで何枚か撮影した。
そのシャッター音に気がついて河村結夏がこちらへ視線を向けた。

「全部……あなたたちが仕組んだこと?」
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