過去夢の少女
『わざわざ?』
お母さんが小さな声で言った。

それは河村浩司の笑い声にかき消される。
『わざわざ準備してきたの?』

今度は大きな声だった。
笑い声をかき消すくらいの声で言い、その場に立ち上がる。

『こんなことするなんて、よほど暇なんだね? あと、臭いのはずっと生ゴミを持ってたあなたの方だよ?』

お母さんの言葉に河村浩司が動きを止めて目を丸くしている。
今まで少しも反論してこなかったお母さんだから、予想外の出来事なんだろう。

『な、なんだよてめぇ!』
どうにか自分の威厳を保とうと思って声を荒げるけれど、お母さんはそのまま教室を出ていったのだった。
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