過去夢の少女
「あんたなんて死んでもいいんだよ?」
助ける前に一言そういうことも忘れてなかった。

意識が朦朧として視線が定まっていない河村結香も、この時だけは大きく目を見開いて私を見てきた。

それからバスケットボールのカゴを所定の場所に片付けて自分のスマホを確認した。

早送りで動画を見てみると、河村結夏がおもらしをしたシーンもしっかりと収められていてまた恵とふたりで大笑いした。

「……どうしてこんなことをするの?」

やるべきことは終わったと体育館倉庫を出ようとしたとき、そんな声が聞こえてきたから振り向いた。

床に倒れ込んで苦しそうな呼吸をしている河村結夏がこちらを見つめている。
「それ、私のお母さんも何度も言った言葉だと思うよ?」

私は河村結夏には理解できない言葉を投げかけて、体育館倉庫から出たのだった。
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