過去夢の少女
夢を見ない
その日、私は夢を見なかった。
高校に入学してから連日続いていた過去夢終わったんだろうか。
朝になりベッドの上に上半身を起こして呆然とする。

「でもあれだけじゃないよね? あんなに壮絶なイジメだもん。そう簡単に終わるわけがない」

ブツブツと口の中で呟いて親指の爪を強く噛みしめる。
少し痛みを感じて指先を確認すると血が滲んでいた。

「もしかしたら夢のせいで私の精神が病んでしまうから、夢をみなくなったのかもしれないし」

私は指先に滲んだ血を舐め取って呟く。
きっと、そうだ。

夢のせいで私が壊れてしまわないように、過去夢の力が制御されているんだ。
「それなら大丈夫なのに。私はまだまだ大丈夫なのに」

今日は恵に報告する夢もない。
それがなんだか悔しい気がして、私は血が出ている指をまた強く噛み締めたのだった。
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