過去夢の少女
まだ躊躇している河村結夏に、私は触れていた机をなぎ倒してみせた。
大きな音がして中のものが床に散乱する。

河村結夏が驚いてビクリと跳ねた。
「あとは踏みつけるだけ。簡単でしょう?」

私は河村結夏の腕を掴んで引き寄せた。
自分の爪先が相手の腕に食い込んでいくのがわかる。
河村結夏が顔をしかめ、痛みに耐えている。

「わ、わかった」
コクコクと何度か頷いてようやく散乱した文房具に足を乗せた。

クシャッと音がして教科書にシワが寄る。
「そんなんじゃねぇだろ!?」
途端に恵が怒鳴り声を上げて、河村結夏が焦って筆箱を踏みつけた。

バキッといい音が聞こえてくる。
私はすかさず廊下へ出て、ドア越しにその映像を撮影しはじめた。

「恵、写り込んでるからちょっとどいて」
そう言うと恵が私の後方へとやってきた。

河村結夏はそれにも気が付かずに、教科書やノートを思いっきり踏みつけ始めた。
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