過去夢の少女
例えば夢の中でお母さんが買い物をしていて、私の大好きな惣菜パンを購入していた夢を見た。

その翌日にその話をすると、お母さんは驚いたようにその惣菜パンを取り出して、『今日はパートが早出だから、パンを買っておいたのよ』と言ってくれたこともある。

だけど過去夢を見るのは特別ななにかがあるときだけだ。

子供の頃の自分にとってはお母さんが朝早くから家を出るということは、自分で家の鍵を持って、ちゃんと鍵をかけたり火の元を確認してから学校へ行くという意味になった。

ちょっとだけ緊張する朝の変化を敏感に感じ取って夢を見ていたのだ。
「今回の夢はお母さんの高校時代の夢?」

自分だと思っていた人は母親で、その人の過去をまるで自分のことのように追体験しているのかもしれない。

だけど確信はなかった。
お母さんの高校生時代の話はあまり聞いたことがなかったし、写真も見たことがない。

卒業写真でもあれば、どんな制服だったのかわかるのだけれど、お父さんが亡くなって小さなアパートへ引っ越してきたときに、ほとんどのものを実家に送ってしまっていた。

お母さんの実家、つまり私の祖父母の家に行けば見ることができるけれど、新幹線で4時間もかかるから簡単に行ける距離じゃない。
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