過去夢の少女
河村浩司
河村浩司。
その名前だけは忘れないように何度も頭の中で繰り返した。

あの夢を見た原因が、河村結夏にあるのではないかという気がしてならなかったから。

「おはよう絵梨~」
昇降口でばったり恵と会って一緒にA組まで歩くことになった。

大葉高校では1年生は3階、2年生は2階、3年生は1階に教室があるので、一番運動量が多くなる。

「絵梨は部活動する?」
「どうしようかまだ悩み中。恵は?」
「私も悩んでるんだよね。中学時時代はずっと帰宅部だったし」

その理由は質問しなかった。
恵が中学校でどれくらい肩身の狭い思いをしていたのか、想像して黙り込んでしまった。

「でもやるなら絵梨と一緒がいいな! ふたりなら絶対に楽しいよね」
明るい声で言う恵を見ていると楽しい気持ちになる反面、やっぱり胸がズキリと痛む。

高校で再開した友人をどうしても自分の元に引き止めていたいという気持ちが、ひしひしと伝わってくるから。

恵は中学時代と同じ気持ちにならないように、必死なんだ。
「そうだね。きっと楽しいよね」
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