過去夢の少女
答えながらA組のドアを開けると、視界に河村結夏が飛び込んできた。

特別目立つ存在ではないし、今も自分の席に座って本を読んでいるだけなのにすぐに見つけてしまうのは、きっと私が彼女を強く意識しているからだ。

ふたりで教室へ入ると、他の子たちが挨拶をしてくれる。
私はそれに返事をして自分の席のカバンを置いた。

クラスメートたちは2日目にしてなんとなくグループを作っているけれど、河村結夏だけはそんなこと興味ないとでもいう様子で1人でいる。

「絵梨、昨日からあの子のこと気にしてるよね? 知り合い?」
恵に聞かれて私は左右に首を振った。

「そうじゃないけど、ちょっと気になることがあって……」
そうだ。

そんなに気になるなら直接質問してみればいい。
河村という名字が偶然一致しているだけなのかもしれないんだから。

嫌な想像なんて結局は当たらないことの方が多いのだからと自分に言い聞かせて、私は河村結夏に近づいた。

彼女は驚いた様子で本から顔を上げてこちらを見つめる。
「なに?」
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